2005年03月21日
 

ココニイルコト(後編)

(承前)

Tは仲間うちでは「カントク」と呼ばれていた。LAのカレッジの短期留学で映画の勉強をして、帰国後はあちらの大学で映画の勉強を続けるために、仕事をやりながら僕らのイベントの撮影をやって、映画監督を目指していたからである。

夢を追い続けるのはむずかしい。

会場であった昔の仲間の中で、昔と同じ仕事をやっていたのは、日本舞踊の先生のヤッコさん、今やエレクトロブギーというダンスの第一人者となりヨーロッパで大活躍、デンマークのロイヤルファミリーの天覧も受けたというダンサーのモリ君、しぶとく自分の職業にこだわり続けたおかげで、銀座ナンバーワンのマジックバーのメインマジシャンとなれたこの僕、鬼喜王子の三人だけだった。

リーダーでシンガーソングライター兼ラッパー兼ダンサーのKは噂によると、カタギの仕事をしているらしいが音信不通。凄腕のDJ、K(上記のKとは別人)は日本で2番目の腕前で、あのころクラブでブイブイいわせていたにもかかわらず故郷にかえってしまったらしい。深夜番組とはいえ、テレビのレギュラーをもっていたダンサーのYは、とあるタレントの付き人をしているらしい。

夢を追うのはむずかしい。

カントクも自分の夢に見切りをつけて、某IT企業の有望社員としての道を選ぶこととなった。
いちばん仲のいい仲間だっただけに、僕はとても寂しい気持ちになった。でもカントクが最後にみんなの目の前で恥ずかしげもなく、彼のかわいい奥さんに言った言葉で救われた。

「僕は映画をやるという夢は多分この先あきらめざるをえなくなると思います。でも今の僕はもう一つの夢、目の前の君を幸せにするということに一生頑張ります。これからもよろしくお願いします。」

奥さんは泣いていた。会場は大きな歓声と拍手に包まれた。
そして僕は…、夢を追い続けることができた自分の幸運と、それゆえに僕が手に入れられずにカントクが手に入れたものを思って、ワイングラスをあおった。

BGM:スガシカオ 「ココニイルコト」

Posted by kiki at 22:09 | コメント (0)
 
2005年03月20日
 

ココニイルコト(前編)

こんにちは、鬼喜王子です。

夢を追い続けるのはむずかしい。

先日昔の「仲間」の結婚式に行って来た。
「仲間」というのは、まだ鬼喜王子が「キキオウジ」と呼ばれるずっと前、プロになるかならないか位にやっていたイベントの仲間で、歌手、ヒップホップダンサー、DJ、日本舞踊、プロデューサー、シンガーソングライター、映像作家、画家、その他のパフォーマーが集まって、何か新しいこと、面白いことをやろうとして活動をしていた。
みんな若くトンガっていた。不可能なことなど何も無いと思っていた。何よりも純粋で未熟だった。

しかしキタナい大人にその純粋さを利用されたある事件をきっかけに、このイベントは空中分解を迎える。そして僕らの未熟さは互いのエゴをむき出しにして、別れに拍車をかけていった。

その後、2、3人の仲間と時々会って食事をする以外は、全く音信不通になってしまった。
そのうちの一人、Tが結婚するという。
僕は不安とうれしさと照れ臭さが入り交じったそんな気持ちでパーティに出かけた。

(つづく)

Posted by kiki at 15:31 | コメント (0)
 
2005年03月14日
 

自分の街

こんにちは、鬼喜王子です。
4月から新生活を迎える皆さんは、そろそろ住む場所を探し始める季節だとおもいますが、鬼喜が所属するウエストキャピタルは一足お先に新しい事務所に引っ越しました。場所は、Bar十二時がある銀座です。
鬼喜は正直、この街に対して、半人前の時代に自分を拒否されているような錯覚を抱いていたせいか、銀座という街が余り好きではありませんでした。
でも今回引っ越しを一段落終えて、散歩がてら買い物に行くとき、自転車に乗って風を感じると、何か街並が自分に対して「ようこそ」と言ってくれているようで、やっとこの街が自分を受け入れてくれたような気がしました。

Posted by kiki at 10:50 | コメント (0)
 
2005年03月10日
 

遭遇と邂逅

こんにちは、鬼喜王子です。
作家の浅田次郎氏もエッセイで書いているが、「思いがけない出会い」というのは、「邂逅(かいこう)」と「遭遇(そうぐう)」に分かれる。前者は会ってうれしい出会い、後者はあまりうれしくない出会いである。
毎日不特定多数のお客様と会うこの仕事をやっていると、思いがけない人に会うことも少なくない。
先日、音信不通だった学生時代の友人が店に遊びに来てくれたときは、本当にうれしかった。この仕事やっていて、ちょっと名前と顔が知られていないとこんな経験はできない。
このように思いがけない出会いが全部が邂逅ならいいのだが、残念ながら遭遇してしまうこともある。
鬼喜王子の休日にサウナはかかせない。休みの日をどれだけリラックスして過ごせるかが翌日からの仕事のクオリティを左右するのだ。
後楽園にあるラクーアに行った翌日、店のスタッフがあるお客様から「鬼喜王子って後楽園に住んでいるんですか?」と聞かれたらしい。なるほど、名前と顔を知られるということは、いいことばかりではないらしい。
どこかでお客様と「遭遇」する可能性があるということだ。
何が言いたいかというと、もはやコンビニで○○な本は立ち読みできない。

Posted by kiki at 10:15 | コメント (0)

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